プラチナの中のス [拡大]
プラチナ900地金を糸ノコで切断すると、中心部に空洞がありました。
こんな大きなスのある指輪には初めて出あいました。
普通は空洞はありません。
場所はリングのちょうど下側で、湯道を取り付けてあったはずの位置です。
これはキャスト製品でしたので、鋳造時に出来たスということになります。
指輪の腕としての厚さは1.2ミリほどですので、ちょうど鋳こみやすいはずですが、なにかの不都合があって先に湯道が固まってしまったのかもしれません。
ロウ立ての時に、湯道と製品の接続部分が細くならないように注意すれば、スが出来る原因のひとつを無くすことが出来ます。
空洞が湯道の方へ行くように、製品ギリギリのところに直径5ミリ程度のロウのボールをつくってあげることも有効な方法です。
この預かり品のプラチナ製品の空洞はロウ付け時にプラチナロウで埋めました。
( プラチナロウは金属で、ロウ立てのロウは油のように燃えるロウです。別のものですのでお間違えのないように ^ ^ )
ホワイトゴールド時計バンドの接合面 [拡大]
指輪の内側の刻印 [拡大]
リングの内側に文字を入れた時に、拡大して見るとバリが出ていることがわかります。
バリというかアリというかカエリというかササクレというか、これは金属を硬い針状のもので引っ掻いて文字を彫ろうとするからできますが、磨いて取り去ることが可能です。
金属に文字を入れる方法は、このように引っ掻くか、彫刻刀のV字型のようなもので彫りとるか、硬い針の先で突ついて点を密に動かし文字にするとか、金属のハンコのようなもので文字を打ち込むとか、レーザーで焼き溶かすとかします。
手彫りするか電気でするか熱でするか機械でするかなどの違いですが、それぞれに長所短所があって、使用頻度や置くスペースや資金力や必要性などの諸条件で設備に違いがでてきます。
文字、ということだけに限れば、印刷やペイントやメッキやブラストなど、別の方法もあります。
きれいなセッティングのエメラルド [拡大]
整然とメレーダイヤ [拡大]
チェーンに真珠を通したあとはこうします [拡大]
グレーパールとホワイトゴールドボールが交互に通れば、ベネチアンチェーンの端をロウ付けして閉じます。
最先端のひとコマをそっとカットして口を開いていましたので、そこにもう一度チェーンの端をはめ込みます。0.7ミリのコマの口を閉じます。地金の厚さは0.1ミリくらいですので慎重に作業します。
フラックスを塗り、極小のホワイトロウを置いて、余分なところに炎が当たらないようにカバーして、ロウ付けします。
ロウ付けは一回勝負です。失敗すれば溶けたり団子になったり歪んだりします。やり直すとさらにひどい目に合います。やはり慎重に作業します。
上手くロウ付けできていれば、あとは酸洗いをして酸化被膜を取り去って、磨き仕上げをして、ロジウムメッキ加工をして、丸カンとプレートを付けて、検品、完成です。
めでたしめでたし。
ベネチアンタイプのネックレスを [拡大]
ゴールドチェーンの口の開いた部分を横のコマに咬ませて一本につなげます。
その部分にフラックスを塗って、金ロウを置きます。
大きいロウを置いてしまうと、数か所のコマが団子状態になってしまいますので、最小限のロウで一回勝負をします。
他のコマに熱があまりいかないように炎を絞ってトーチでロウ付けします。
何回もやり直すとぐじゃぐじゃになってしまいますので上手に作業します。
酸化して黒くなった部分を希硫酸で洗い、きれいになれば水洗いし乾燥して、バフ磨きをします。
順番に写真を撮りました。
赤い印しは、ロウ付けする箇所を見失わないように、熱の回らない左右の位置にマジックインキで描いています。
これ、大切なポイントです。
こんなチェーン [拡大]
お餅を棒に [拡大]
綿のような純金 [拡大]
純金は柔らかいので、ヤスリで削ってもパラパラと下に落ちないで、そのまま指輪にくっついている粉地金も多いです。
削るたびにもわもわとした削り屑が綿菓子を作るように増えていきます。
このぐしゃぐしゃしたのはかなり強力に指輪にしがみついていて、爪で取り去ろうとしても痛いのをガマンして根性を出して力を入れないとなかなか取れてくれません。
右上の画像の真ん中に写っている黒いのは、欠けたヤスリの刃です。
純金は柔らかいはずですが強い粘りもあるので、硬い反面脆いヤスリの刃を巻き込み、ひとかけら取り込んでしまっています。
加工した貴金属の粉地金には、このように鉄分なども混じってしまいますので、再使用する場合には事前に必ずしっかりとした酸処理の工程が必要になります。
アンティークジュエリーの刻印 [拡大]
ヨーロッパのアンティークジュエリーに刻印されていたホールマークです。
今の日本の造幣局の品位証明には無い 625 と刻印されています。
ゴールドの場合の日本の品位区分は6区分で、1000分率表示で 999、916、750、585、416、375 の6種類です。カラットでいうと、K24、K22、K18、K14、K10、K9 です。
62.5パーセントの純金が含まれているので 625 と、丁寧にもK15の意味でしょうか 15 の数字まで打刻されています。
造幣局のマークは日本の国旗と菱形とその中に数字がよく見える大きさで打たれています。最近は精密な技術が進歩したためか、ちまたでは肉眼では読めないほど小さな文字が入っているジュエリーもよく見かけます。
これは指輪幅いっぱいに文字が入って、サイズ直しの場所に困るくらいにスペースをとったとても見えやすい刻印です。
サイズ直し時はどこかにスペースを探して、なんとかきれいなお直しになるように努めますからご安心ください。
タグ:625 アンティークジュエリー