お餅を棒に [拡大]
丸餅形の純金を金鎚で叩いて角棒に作ります。
ガンガン叩いてもOK。
この辺りの工程は、地金が柔らかいので苦労はしません。
ただ、平行四辺形の断面にしてしまうとダメですけれど。
割れない地金がいい地金です。
綿のような純金 [拡大]
純金は柔らかいので、ヤスリで削ってもパラパラと下に落ちないで、そのまま指輪にくっついている粉地金も多いです。
削るたびにもわもわとした削り屑が綿菓子を作るように増えていきます。
このぐしゃぐしゃしたのはかなり強力に指輪にしがみついていて、爪で取り去ろうとしても痛いのをガマンして根性を出して力を入れないとなかなか取れてくれません。
右上の画像の真ん中に写っている黒いのは、欠けたヤスリの刃です。
純金は柔らかいはずですが強い粘りもあるので、硬い反面脆いヤスリの刃を巻き込み、ひとかけら取り込んでしまっています。
加工した貴金属の粉地金には、このように鉄分なども混じってしまいますので、再使用する場合には事前に必ずしっかりとした酸処理の工程が必要になります。
祝!ご結婚! [フルオーダー]
最後にショック [サイズ直し]
よくあるんです。
小売店からサイズ直しを依頼されて作業し、完成した、と思って確認したら、ダイヤモンドが無い。
サイズ直し時の糸ノコで切る振動にも耐え、ヤスリ掛けの振動にも耐え、バフ磨きの振動にも耐え、これはまぁいいつくりのジュエリーだと思いながら、ダイヤモンドが全部そろっていることを確認して、超音波洗浄して、水洗いから取り出してみるとダイヤモンドが無い。
結局、超音波洗浄器の液の底に沈んでいるんですけど、0.9ミリほどのが4ピース。超音波の振動で位置がずれ、外れたのですね。
極小だから探すのも大変なんですよね。
乾燥前に撮影して拡大してみたら、もともと爪が無いことが確認できる。
オーバーハングした爪が無くて、一応丸っぽく爪の様子はしてる。
押し込まれて穴の奥に引っかかっていただけのようでした。
石留担当者はちゃんと作業しないとダメでしょ。
メーカーは出荷前にちゃんと検品しないとダメでしょ。
卸屋は入荷時にちゃんと検品しないとダメでしょ。
小売店は販売前にちゃんと検品しないとダメでしょ。
お客様は購入時にちゃんと…… は、ムリですよね。ちゃんとした品だと安心しているから買ったんですもの。
で、結局、回り回ってサイズ直しを担当した者がもう大変なんですから。
小売店にダイヤモンドが外れたと伝えても、渡すまでは付いていたのだからサイズ直し時の事故、と主張される方もあったりして。
ダイヤモンドが無くなってしまった場合は、自己負担。
石留作業は無料。
小売店に謝る。
ほんとはメーカーの石留作業時点が原因なんですから。
勘弁してね、と思うことは毎月のようによくあるんです。
全員がレベルアップしないとダメでしょ。
真円リングには無理です [サイズ直し]
指輪の左右真横から上部が固定された形のリングサイズを縮める場合は、下半分の形を変形させてサイズを直さなければなりませんので、たいていの場合は、大げさに表現すると丸餅を横から見たような形になります。
このリングの場合はさらに特殊で、上部が非常に薄い地金で出来ていたり固定された箇所が偏っていたりしますので、さらに変形させる必要がありました。
サイズ棒が真円にできていますので、指輪も丸くないとだめ、と思い込んでいる場合が多いですが、指のほうが指輪の形に合わせてくれますし、人の指の断面は円よりもむしろ正方形に近いですので、現実的にはこの様なまったく丸くない形でもなんの問題もありません。
見た形が丸くても楕円でも四角でも六角でも、内側周囲の長さが同じならば同じサイズですね。
必要なサイズになるように指輪下部をカットして、切り口をすり合わせてロウ付けします。
この場合は、微調整のために0.2ミリ厚の地金をはさんでロウ付けしました。
ヤスリ仕上げと磨き仕上げをしてからロジウム仕上げをして完成です。
ウェディングリング出来ました [リフォーム]
いつのまにか抜けた時計軸 [時計]
ダイヤ7兄弟 [加工]
四つ葉のクローバーのセットリングを [フルオーダー]
指輪バラバラ事件 [サイズ直し]
まだiPhoneが日本に無い頃、ガラパゴスケータイで360-240ピクセルの写真を撮って、パソコンに残していた画像。
ずっと昔、お客様からお預かりして、サイズ直しをしようとしたピンクゴールドの指輪です。
カットした部分をロウ付けするために、指輪の下部にトーチの炎を当てると、ピンクゴールドが微かにヒビ割れてきていることに気づきます。
ヒビを埋めようとロウを置き、ロウ付けします。
温度が上がった部分にさらにヒビ割れが発生します。
それをなんとか修理しようとロウ付けを繰り返すと、結局、指輪が崩れ、全体がバラバラになりました。
普通は温度を上げすぎると指輪本体が溶けてしまいますから、これは温度を上げすぎているわけではなく、もともと製品になったものを昇温してはいけない配合の金合金だったのですね。
ピンク色のはずの地金が黒くなっているのは、おそらく合金に多く入っていた銅成分が炎で酸化したからです。
形を保っているように見える腕部分も、テーブルに指の腹で押しつけるとボロボロと崩れるような状態です。
偶然、サイズ直しの前に写真を何枚か撮っていたので、別の割れないピンクゴールド地金で同じデザインに手作りできた指輪をお客様にお返ししてご了解いただきましたが、辛い経験でした。
優しいお客様で良かったです。
ピンクゴールドの中には、このようにサイズ直しや修理を行えない配合になっている合金もありますので、どうぞご参考ください。
メーカーは製造段階で事前に分かっているのかなぁ…。
小売店はそのようなことを分かっていて販売しているのかなぁ…。
…いつも不思議に思います。